島の米と木で描く、未踏のテロワール

島の米と木で描く、未踏のテロワール

「テロワール」。土地の風土、気候、そこにある水と自然が、酒の味わいを決定づけるという概念。 石垣島は、沖縄の中でも豊かな水に恵まれ、古くから水田耕作が営まれてきた稀有な島だ。もし、この島の水で育った米を使い、この島の風土の中で熟成させたなら。 それは、世界中のどこにもない、真の意味での「石垣島の蒸留酒」になるはずだ。 今回の企画を起点に「石垣島産ウイスキー」プロジェクトが立ち上がり、本格的に始動している。八重泉が見据える、次なる70年への挑戦。

石垣島に田があるということ

土屋守氏(以下、土屋): 昨日行きましたけど、石垣って沖縄でも珍しい水田耕作がある。あれだけの水田があるのを、僕は知らなかった。

座喜味盛行氏(以下、座喜味): 石垣島は、沖縄本島と比べても山が高く、水が豊富です。だからこそ、昔から水田耕作が営まれ、米作りが行われてきました。西表島もそうですが、この八重山エリアは、実は米の産地でもあるんです。

土屋: そう、そこが石垣島の大きなポテンシャルですよね。世界のウイスキー業界ではここ10年で「テロワール」の研究が進み、転換期が来ています。原料の大麦の品種や産地が、いかに味に影響するかという研究が進んでいる。石垣島には、インディカ米の栽培に適した環境がある。実際、「北陸193号」のようなインディカ系統由来の品種の栽培も始まっていますよね。

座喜味: ええ。地元の農家さんと協力すれば、石垣島産のお米で酒を仕込むことは十分に可能です。自分たちの足元の水と、自分たちの土地で育った米は本当の意味での強みになると思っています。

発想を変える──「ライスウイスキー」という可能性

土屋: そこで僕が注目しているのが「ライスウイスキー」です。 先日、シンガポールの蒸留所を見てきたんですが、彼らはタイ産の高品質なジャスミンライスを使い、酵素剤で糖化させて発酵させていました。これを飲んだら、結構グローバルなウイスキーの味がした。米独特の癖がなく、非常に洗練されていたんです。日本酒の蔵が造るライスウイスキーとはまた違う、新しいアプローチがある。石垣島産の米を使って、八重泉さんのあの直火釜で蒸留し、樽で寝かせる。そうすれば、世界に通用するライスウイスキーができるんじゃないかと。

座喜味: そこだったら僕らもいけるかなぁ。

土屋: 石垣のテロワールを生かすなら、穀物を石垣産にするのは面白い。ふと思ったんだけど、精米しないで使ったらどうなんだろうね。麦芽って殻付きでやるじゃない。そのままでも。

座喜味: それも面白いかもしれないですね。

100年後の森と、酒の未来

土屋: 今、日本の森の木で樽を作り、その樽で酒を熟成させるプロジェクトを進めています。100年後の森林資源を考える取り組みです。ポリシーはシングルカスクでのボトリングを考えていて、日本のクラフトウイスキーをメインで買っていこうと考えているんだけれども、その中に泡盛とかもね、面白いかなと。

座喜味: 八重泉も、ぜひそのプロジェクトに参加させていただきたいです。

土屋: 今、ウイスキーの世界では、ミズナラなどの樽材が争奪戦になっています。そんな中で、日本には日本にしかない木がいくらでもある。そのうちの代表格が「杉(スギ)」なんですよ。ただ、曲げ加工に向かないので、和樽、パラタイズ式でやればいいじゃないか。単なる容器と捉えれば。

座喜味: そうですよね。日本酒が昔からやってきていることですから。

土屋: 世界に目を向けると、アイリッシュウイスキーなどが様々な木での実験を始めています。「山桜」や「アカシア」、そして今回八重泉さんが選んだ「クリ(栗)の木」。これらは日本でも入手できる木材ですが、特にクリはタンニンが豊富で、私たちも非常にポテンシャルを感じている素材です。

座喜味: 今回の企画では国産のクリ樽から始めましたが、まずは、「日本の木」の可能性に挑戦したかったんです。ただ、その先にあるのは、「石垣島にどんな木があるのか」ということですね。いずれは水も八重山、お米も八重山、それを寝かせる樽も八重山。八重山テロワールを感じられるお酒を作りたいです。

土屋: 今回仕込んだお酒が目覚めるのが1年後か、3年後か。あるいはもっと先か。時間が味方になる仕事ですね。

時間を手渡す酒──ZAKIMIが内包する風土と熟成 前編へ続きます。

写真:東里 明斗
現地リサーチ・コーディネート:東里 明斗
撮影協力:八重泉酒造、徳村浩
取材・文:株式会社Tanjun
企画・プロデュース:株式会社Tanjun

八重泉30度600ml 70周年記念ラベル

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